日本の津々浦々で愛情たっぷり育まれた、苺たちの知られざるお話をお届けします。
日本各地の苺農園を訪れ、土地の匂いや風を感じ、育てている方と直接お目にかかることで選び抜いた苺が京都のメゾン・ド・フルージュの店頭に並んでいます。その農家さんとの苺のお話を皆さんにもお伝えしたく、この新聞をつくりました。
第一回目の舞台となる「八ヶ岳富士見高原菜園 いちえや」は、いわゆる脱サラをしてゼロから苺農家となった中山陽介さんが所有する農園です。
八ヶ岳の南麓、標高1030m付近に広がる農園は標高が高く、寒暖差が大きい地域。中山さんはその気候をいかし、夏から秋にかけて収穫できるサマープリンセスとすずあかねを育てています。「町内で1軒だけ夏苺を育てている農家の方と話すなかで、寒い地域の特色を出せるものを作りたかった。そして、『日本全国で農家が少ないし、生産方法や品種自体も安定していないので難しいよ』と聞き、逆に面白いなと思ったんです」
「サマープリンセスは長野県の農業試験場で生まれた苗で、長野県下でしか作付できない特異性があります。長野県民だったら作っておけるようになりたい。あまり大きくならず、味・甘み・旨みが出やすい品種です。実がやわらかいので、トップに載せるよりは、サンドしてそのやわらかさを特徴としてもらうのもいいと思います」
観葉植物レンタルの会社に入社したのですが、働いてみてどんな仕事でも大変だと気づいて。故郷に戻ることについて父に『仕事があればなんでもいいかな』と言ってしまったのですが、せっかく大学を出たのにと言われた。そこで大学で学んだ農業にしようと思いなおし、そこからはわき目をふらずに農業に向き合っています」
「いまはサマープリンセスをもっと美味しくつくれるようになりたい。とにかく苺の変化を見つめ続けていると、工夫した結果が1週間後ぐらいに出てきます。やはりうれしいのが、きれいで美味しい苺ができた瞬間。そして、それを食べたお客さんが使われた苺が美味しいっていってくれること、シンプルにそれが一番うれしい。いつか自分のブランドが作れたらとも思っています」