日本の津々浦々で愛情たっぷり育まれた、苺たちの知られざるお話をお届けします。
メゾン・ド・フルージュをはじめるきっかけとなった苺、それが「さちのか」でした。13年前にある農園のさちのかの味わいに感動し、「この美味しさをたくさんの人に広く知ってもらいたい」と、生産者から一番美味しい状態の苺だけを直送してもらって作る、苺のお菓子の専門店が生まれました。第二回は、その思い出の苺、さちのかを育む新春の畑を訪れました。
さちのかを始め、7種類の苺を育てる京都府八幡市の渋谷農園。祖父母が行っていた京野菜を主軸とする農家を引き継いでから2013年に農業法人として起業。新たに苺を育て始めてまだ4年ですが、その試みが注目を集めている農家です。「そういう評価がもらえるのはうれしいですね。僕が家業を継いで、会社を作ったりした話を聞いて、一緒にやりたいといってきた幼馴染でもある社員が、僕の出張中に『専門店の方に苺の評価を聞いてみたい』とメゾン・ド・フルージュさんにご連絡をしたのがきっかけでした。出張から戻るのも待てないと駆け込んだ勢いでしたが、そこから今の縁につながりましたね」
生産現場では紅ほっぺなどの品種の方が1つの苗からたくさんの実が収穫でき、育てやすいため、さちのかの作付け面積は減ってきています。この状況を一緒に打破してもらうべく、渋谷さんにさちのかの栽培をお願いしました。
「苺のなかでもさちのかは、香りや酸味と甘みのバランスも良く、色も濃い。僕も苺の王道だと思います。ほかの品種に比べると、味が良くなるように調整したことに対しての動きが遅く、変化に気づきにくい苺。どうすればいいのかを考えて対応していくのがめちゃくちゃ面白いです。さちのか以外には、章姫(あきひめ)・レッドパール・桃薫(とうくん)・Cベリーなどを育てています」
渋谷農園では「京の雫」を自社ブランド名として商標登録し、海外への出荷も行っています。「実は苺を育てたのも、沖縄での海外輸出の商談会に参加して、日本のフルーツの人気の高さを知ってから。現在は香港、マレーシア、台湾、シンガポールに出荷しています。現地ではそのまま食べられる、甘みが強くて日持ちする苺が求められています。国内外問わず、食べたいと言っていただけるところに安定して出荷できることと、いまはとにかく美味しい苺が作るのが目標です」 苺の生産農家がまだ少ない京都で、苺について深く話せる方がいるというのはとても心強いです。このさちのかは2月、3月とさらに味がのって美味しくなるので、みなさんぜひ味わってみてください。